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連邦消防学校の正門にて | |
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状況把握Size Up よく災害や事件のニュースで「○○対策本部」という言葉がでてくる。「あれはムラの消防団には関係ないことだ」とあなたは思ってはいないか。災害対策とは人、施設、機具、通信をいかに管理するかのシステムだ。そして災害対策本部を最初に設置して指揮をとるのは、現場に最初に駆けつけた消防団員のあなただ。 現場に最初に到着した消防団員はまず状況把握(サイズアップ)をする。情報を集め、観察して、予想する。これが戦略を立てる基礎となる。消防指揮とはこの状況把握から次にあげる一連の作業を火災鎮圧まで何度も繰り返すことだ。 ・戦略を決め、戦術を選び、アクションプランをつくる。 ・実施する。 ・実施したオペレーションを評価する。 状況把握(サイズアップ)では次の点を網羅する。 Water どれだけの水が必要なのか。 Area 建物の面積は。 Life Hazard 消防団員と市民の生命の安全は確保されているか。 Location/Extent 建物のどの部分が火事なのか、火災の勢いは。 Apparatux/Personnel どんな消防車があるか。何人の消防団員がいるか。 Construction 建物の種類は。鉄筋か木造か。 Exposures 延焼物はあるか。どれだけの距離か。 Weather 天候の影響は。 Auxiliary appliances スプリンクラーはあるか。可燃物は。電気は。 Special hazards 危険物は。2階と屋根に重いものは。その他の危険は。 Height はしごでとどくか。はしご車でとどくか。 Occupancy 民家か。会社か。公共建物か。倉庫か。 Time 夜か、昼か。週末か。季節の影響は。 現場をサイズアップにより把握して先取り行動(PROACTIVE MODE)をとることが戦略を決定するために必要。後手に回る(REACTIVE MODE)ことを避ける。 戦略を決める Strategy 災害対策において戦略(Strategy)は現場の全体計画であり、災害対策で何をするかを決めることだ。一般的な戦略分野は以下に示される。
戦術を選ぶTactics 戦術(Tactics)とは戦略を遂行するために行わなければならないオペレーションのこと。指揮者は戦略遂行のための戦術の優先順位を決め、それぞれの戦術を誰が行うかを指示する。どの機材と人員が現場に到着して利用可能なのか。応援部隊の到着時間とその能力は。一つの戦略を遂行するためにいくつかの戦術が必要な場合がある。これは資源、仕事の複雑さ、消防団員の能力により決まる。 例えば、救出の戦略では、二人が2階へ捜索救出に向う、ホースを持った消防士2人は放水しながら階段に延焼するのを防ぐ。捜索を援護するために2階の窓を換気のために開ける。指揮者であるあなたは最重要事項の指令をした。1つの指令を出したら次に重要な項目の指令をする。 戦術の目的がわかりにくく具体的でない例として「火に水をかけろ」「煙を外に出せ」というのがある。目的を具体的にすれば、「ホースラインを内部にいれ、火災を1階で止めろ」「西側の火点の真上で換気を実施」となる。 うまく運営されている組織にはコーディネーションがある。指揮者は状況を把握し、それぞれの班に具体的な任務を与え、それぞれの任務を確認し、一人一人の消防団員が勝手なことをしないようにする。これが規律である。この規律がコーディネーションだ。 この規律が怪我と生命の危険を減らし作業効率を上げる。 アクションプランを決めるAction Plan アクションプラン(Action Plan)とは特定の目標を達成するために特定期間内に決められた項目を順番通りに行動を起こすこと。これは「誰が・いつ」それをやるのかを決めることだ。アクションプランは災害現場で起こりえる全ての戦術行動とその援護行動を管理して、現場で重要事項が見過ごされることを防ぐ。 良いアクションプランには大切なステップ(タスク)、それぞれのタスクの責任者が決められている。そしてタスクが期限内に正しく行われたかを監督する。 アクションプランは常に評価し必要であれば変更する。戦術は命令通りに行われているか。戦術をこなすための資源は十分か。行われている戦術は戦略の目的に合致したものか。評価するには情報が必要だ。班長は何を見て感じ聞いているのか。部下の報告がいかにアクションプランが実施されているかを評価する情報となる。あなたの仕事を評価する際には以下の質問をする。 1。目的は達成したか。 2。なにを正しくできたか。 3。なにを間違えたか。 4。どうすれば良かったか。 どんなプロジェクトでもその途中であなたが考えもしなかった新たな問題が起こるものだ。だから全体の戦略計画をその問題を解決するために立て直すことになる。 資源状況の現状をつかむステータスシステムをつくるStatus System 連邦消防大学では大きなラミネート加工された用紙に水性ペンで指揮系統から人員配置を書き込んでゆく方法を教えている。災害の全体図を示し、明白な問題とその解決策を示すことは戦略を決定し戦術を選択するために必要だ。これにより指揮組織の構造を明確にし役割の任命が明確になる。資源の状況とその使用状況の記録が残る。現場で作業中の資源と、任命された資源そして要請され出動中の資源が明確になる。 この記録システムによりアクションプランを具体的に評価でき変更や補足が可能となる。指揮の移管がなされた時に指揮情報が正確に次の指揮者に伝わる。言葉での伝達を最小限に押え重要な情報が誤って伝わったり見過ごされることを防止する。また撤退計画をたて監督するときにも役立つ。そして最後に災害後の反省会や報告書作成と事後調査にも役立つ。 消防団員の安全Safety 消防団員の安全に対する認識は現場に到着する前に持たせなければならない。現場での安全の為に全ての消防団員には規律ある行動が求められる。消防団幹部は現場での安全規則を団員に徹底してわからせ、それを完全に守らせる。現場に到着した消防団員は完全装備をし、またこの装備をすることを例外なく行わせることが大切。 非常事態のいかなる時点でも安全は最重要項目。安全の責任は指揮者にあり幹部もその責任を担う。戦略と戦術の選択はリスク/ベネフィット(危険/利益)の考えにより決められる。危険が高く利益が低い状態は避ける。例えば人が住んでいないと思われる建物の1階が完全に炎につつまれているときに2階の捜索をする命令などがそれにあたる。あるいは屋根の構造がしっかりしていない建物の屋根裏が燃えているときに屋根から換気を行うことなどは避けるべき事態だ。 緊急対策時の全ての消防団員は危険区域を知らされていなければならない。このために指揮者に対しての情報が必要となる。指揮者は団員の報告に基づいて関与する消防団員に通告する。安全に関する連絡は全ての通信で最優先される。災害現場で指揮者が安全確保のために時間を費やせない場合はだれかを安全管理部長に指名する。 指揮と組織Command system 「消防団の軍隊行進は組織で動く規律を教えるためだ」私は以前にムラの消防団幹部からこのような説明を受けた。 しかしムラの消防団には上下関係はあるが組織(システム)はない。システムがないのに規律を教えられるはずがない。 緊急事態のオペレーションにはシステムが必要だ。ではシステムとは何だろう。人間の体もひとつのシステムである。会社も多くの部門から成り立つシステムだ。システムとは関連ある部分や役割の集合で、共通の目的を達成するために作られたものである。システムにおいては権限と責任を部下に委譲することが重要。部下に権限を与えることにより権限の流れが明確になり確実な管理が可能になる。このことにより指揮が統一される。 一つの分野に集中している人は、真剣に仕事をすることができる。目的がその分野に限られれば、目的を達成するための仕事は順序よく処理される。人間というものはどうしても他人がやっている仕事に口を出したがる。これが規律を乱す一つの原因となる。 消防指揮とは階級を基本にしたシステムではない。成果を基本にしたシステムだ。会社でもそうだ。これは最もその任務に適した人がその状況での適切な部署に配属されるということが大切だ。 管理範囲(Span of control)とは上司が何人の部下を持っているかということ。緊急組織において最適な管理範囲は5人だ。その範囲は2人から最高7人までが限度。状況がつかめていない状態では、誰も5人以上の直属の部下を持ってはならない。 指揮の統一(Unity of command)とは「全員がひとりの上司を持つ。そして自分の上司が誰かを全員がわかっている」こと。一人の消防団員に二人以上の上司が命令するとその消防団員は混乱する。混乱は問題解決を遅らせ消防団の使命である人命救助と財産保護を遅らせる。 指揮者のコマンドプレゼンスCommand Presence コマンドプレゼンス(Command presence)とは指揮者の自信を持った態度のこと。指揮者は指揮能力と自己に対する規律を持ち、災害対策のためには労力を惜しまない。コマンドプレゼンスを持たない指揮者とは、「大声で話す」、「指令を叫ぶ」、「命令を下品な言葉で説明する」、あるいは「無秩序な行動をする」など。あちこち走り回ってはいるが、目的が何も遂行されていないなど。部長が消火作業中に自分達が何をやっているのかがわからなくなるというのは、災害現場の掌握がなされていないということで、コマンドプレゼンスを失っていることになる。 我々が現場に到着するときには、事態は大きくなっている。だれかが統率して非常事態の収拾を図らない限り状況は悪化する。指揮者であるあなたが直面している非常事態は、あなたがおこしたのでもなく、あなたの責任でもない。あなたはそれを鎮圧するためにそこへ来たのだ。「この災害は私が引き起こしたのではない。私はここに火災鎮圧のために来たのだ」と自分に言い聞かせる。 ストレスのレベルが高い場合(多くの非常事態の場合)や、短時間では解決しない状況では、指揮者の気持ちは動揺する。しかし焦ってもしょうがない。消防団の能力を越える災害や、重大な戦略の決断を迫られる状況にあなたは置かれる。あなたに必要なのは規律であり、自信であり、そして能力だ。これがコマンドプレゼンスである。 コマンドプレゼンスを身につける一つの方法は、あなたの消防団の地区内で火災を想定しいろいろな火災のシナリオをつくってみることだ。それぞれの状況でどのように行動するかを考える。この様なメンタルな訓練は消防団員にとってあまり為にならないように考える人がいるかもしれないが、スポーツや音楽などの訓練においても合理的に能力を身につけるためにはこのメンタルトレーニングというものが大変に重要だということを忘れないでほしい。 体調に気をつけることもコマンドプレゼンスのためには必要だ。ストレスのショックに負けず、長時間の指揮に耐えるためにも十分な体力を持つ必要がある。判断をするということは大変に知的な作業である。しかし、その人の体調が悪く疲れやすかったりすると、精神力が低下する。これはニューロセニアという現象で、その人がストレスに長い間おかれたときに起こる。この状態は職務による疲れで適切で正確な判断を下せなくなった状態の事である。 コマンドプレゼンスとは一言で言い表せるものではない。勲章の様に見せることはできない。それは災害対策本部の指揮をする人が必要なものとして得なければならない経験に裏付けられた能力なのだ。コマンドプレゼンスによって私達の消防団が地域住民の信頼を受けられるのだ。 指揮を宣言する 最初に指揮をとる人はオペレーションの初期段階において本部が設置され機能しているということを公式に発表する。これにより対策本部ができたこととその人が個人の責任で現場を掌握した行動をとり、かつ組織行動を行うことの宣言となる。このことにより指揮者は一人であることを周知させ、別の人が指揮をとろうとした場合に、指揮権の所在を迅速に一人に絞ることが出来る。もし誰もコマンドをとることを公式に言わなければ、全ての団員は指揮本部がまだ設置されていないことがわかる。 最初に指揮をとる人は例えば「第4班の班長が火点の西側道路に本部を設置する」と宣言しなければならない。どんな非常事態でも本部は固定した場所に明確に設置する。これにより無線での通信の混乱を防ぎ、後に到着して指揮をとって替わる人が容易に行動に移ることができる。誰でも指揮者と話をしなければならないときには、火点西側の道路の指揮者を求め、そこの無線を持っている人が応えて指揮に報告すれば良い。火点西側の指揮者は一人だけで、だれも混乱することがない。無線の番号で指揮を決めることは指揮の問題で混乱を招く原因となる。 指揮の移管 緊急事態では消防団の全ての上下関係は消火初期に於て逆になる。消防団組織図の一番下にいる班長と団員が普通は最初に現場に到着する。指揮をとる役員は組織表とは逆の順番で現場に到着するのが普通。最初に指揮をとる消防団員は上司が来て指揮をとるまでは指揮をとり続けることになる。最初に指揮をとる人は、指揮者と消防団員との間にしっかりした指揮系統を確立してそれを維持する責任がある。大事なことは、災害現場では誰かが指揮をとりそして全ての消防団員が誰が指揮をとっているのかがわかっていることだ。 指揮を上司に移すときにそれまでの状況を報告する。戦術の優先順位、アクション・プラン、今までに何を成し遂げたか、オペレーションの評価、現在使用している消防車や団員の数、どの消防車や団員が待機しているか、どんな消防車や団員が応援に必要かを報告する。特に、危険物あるいは団員に危険な状況の報告は大事だ。これらの情報により新しい指揮者は状況を分析し適切な行動がとれる。 この情報の伝達は迅速に行う。指揮の移管は無線でも済むが、お互いに顔を見ながら行うことが望ましい。顔を見ながら意志の疎通をすることにより自分の耳で聞き自分で実際に観察することが出来る。その方が情報を伝達する側もやりやすい。しかし災害現場ではそれはほぼ不可能である。無線がよく使われる。しかし無線には電波の届く範囲と誤解が生じ安いという2つの欠点がある。たとえ面と向かっていようが無線であろうがメッセージははっきりと簡潔に伝えなければならない。無線で相手の言ったことを繰り返し確認することは絶対に必要なことだ。 指揮を上司に移してゆくのには理由がある。状況がより複雑になっていくと、コントロール(統制)を保つための問題が増えてくる。より多くの消防自動車と団員が動員され消火作業に配属されると、それぞれの仕事をコーディネイトすることがより難しくなってくる。多くの消防団員が動員されると、指揮者の目が行き届かなくなる。指揮者の責務を分割し幹部の管理範囲(Span of Control)を減らす必要がある。一人の上司(部長)に5から6人以上の団員を管理させてはならない。 指揮の移管のもう一つの理由は指揮者が今までに受けた訓練を上回るような複雑な災害の場合のためである。指揮者は彼の能力を越える状況に遭遇することをいつも考慮にいれ、より経験を持つ人に指揮を譲る覚悟を持たなければならない。これが消防団には消防団長以外に多くの幹部役員がいる理由だ。 指揮の移管は複数の消防組織や自治組織等が関わる災害にも行われる。例えば、危険物を積んだ貨物列車が脱線した場合には多くの組織が動員される。この場合には列車会社や危険物製造元の担当者あるいは警察が指揮をとることになる。 指揮の移管に際して最も大切なことは正確な情報が全て次の指揮者に伝わること。次の人が指揮をとる前に現場のオペレーションに関するなるべく多くの情報を得なければならない。出動の途中で無線の通信内容や、個人的にその建物に関して知っている情報や、到着して目でみる状況でどんどん現場の状況を把握する。 |